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映画『パンズ・ラビリンス』 [映画の感想]

2007年秋の公開に先立ち、結構長いこと恵比寿ガーデンプレイスで予告編を上映。予告編からは「ダーク・ファンタジーらしい」という程度しかわからず、ついでに言うなら「なんだかエロい(ロリータもの?)」みたいな、つまるところ、とてもミステリアスな映画という印象しかなく、気になりつつも上映期間終了。先日ようやくDVDを借りて観たんだけど、これがまあショッキング。残酷な描写もあるし、けしてハッピーエンドではないけれど、面白かった。


パンズ・ラビリンス 通常版

パンズ・ラビリンス 通常版

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • メディア: DVD


※詳細なストーリーは公式サイトにおまかせします。もしくは、DVDを借りてみてくださいませ。

舞台は1944年、内戦後のスペイン。戦争で父を失った母子が、再婚相手のもとへ引っ越してくるところから物語は始まる。主人公は、おとぎ話の大好きな夢見がちの少女。美しい母の再婚相手は、フランコ将軍の独裁政権に反抗する組織を鎮圧すべく日々の任務にあたっている軍人。残酷という言葉が軍服着て歩いているような男。少女が迷い込んだ迷宮は、厳しい現実から逃避するための幻だったのか、それとも本当に存在していたのか。少なくとも、大人たちには見ることのできない世界であるけれども、少女にとっては現実のこととして立ちはだかり、甘美なだけではない残酷な試練と、最後にはある意味安らぎを与えたわけである。
ファンタジーあるいは精霊たちの物語が持つ残酷性と人間世界の残酷性が絶妙にリンクしていて、観ていて気持ちのすっきりする話ではないけれども、面白いなあと思った次第。痛そうなシーンや出血多量のシーンがそれなりにあるので、苦手な人は心して観るべし。

タイトルの「パンズ・ラビリンス」は、直訳すれば”パンの迷宮”。パンは牧神の意。迷宮で少女はパンに出会い、3つの試練を課される。物語の中で重要な役割を担う家政婦の「私の母は”パンに気をつけろ”と」という台詞が、良い具合に物語の行く末を暗示している。何故気をつけなければならないのか、あとは物語を楽しみ給えという憎い演出。
軍人の最期のシーン。反乱組織に囲まれたときに辞世の言葉として、自分が死んだ時間を息子に伝えてくれと言ったとき、あっさり断られて、「え、まさか」みたいなきょとんとした顔をするのが、絶妙。お前あんだけ酷いことしてて伝えてもらえると思ってんの!と突っ込みを心の中で叫びつつ、軍人の心に欠落した部分があることを改めて実感。仄めかしはあったので、やっぱりこいつどっか変と思いつつ、それがより一層、軍人を不気味なものにしていると思う。

DVDの特典映像として、日本版と海外版の予告編が収録されていた。どちらが秀逸かと問われれば、私は迷わず日本版と答える。日本版予告編は、冒頭にも書いたけど、暗く悲しげ且つ大人になりかけた少女のエロスが満載。ちょっとやばいくらい。予告で観たあのきらびやかな場面が、実は悲しみに満ちていたことを知って、その点でも上手いなあとちょっと思う。
一方海外版はといえば、ダーク・アクション・ファンタジーみたいで、そこはかとなく安っぽい。けして、多数の賞にノミネート・受賞した作品には思えない…。まあ好みではあるが、見比べてみる価値はある、かも。

公式サイト↓
http://www.panslabyrinth.jp/
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