『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』 [映画の感想]
2007年のカンヌ国際映画祭に、この作品が”批評家週間”正式招待作品として上映されるとのニュースを目にしたとき、カンヌ云々は正直どうでもよくて、タイトルに心射抜かれ、これは見なければならないと思いました。
で、念願叶って、観たという次第、簡単にコメントをメモしておきます。
最近、文章を書く気力が持続しないので、QA方式で記載します。友人から、どんだけ~と突っ込まれそうですが。
映画『黒猫白猫』 [映画の感想]
映画『殺人カメラ』 [映画の感想]
一言で述べるなら、デスノートならぬデスカメラを巡る話。現像された写真をそのカメラで撮り直すと、被写体はその写真でとっていたポーズそのままに死んでしまう。
爺さんの代から街で写真屋を営んでいる主人公。貧しいけれども正義感は人一倍ある。そんな彼がある日、「殺人カメラ」を手に入れる。主人公はカメラを使って、街で暴利をむさぼる連中を殺していく。しかし、たいていの物事にはいろんな側面があって単純にその人を殺したからといって問題が解決するわけではない。そのことに気づいた主人公は自分の行いを後悔するが…
とまあこんな具合に話は展開する。苦悩シーンはホントにクライマックス。主人公が苦悩し続けるようなタイプの作品ではない。悪人の姿も殺人のシーンもどこか滑稽。なので、この映画の分類はコメディである。殺人カメラを主人公に渡した悪魔も、まあなんていうかしょぼくれた爺さんで、恐怖するというよりも爺さんしっかり!と励ましたくなる感じである。
街の祭りの場面があるのだが、大変生き生きとしていて、実際に祭りの場にいるかのような気分を味わえる。
映画『ローラーとバイオリン』 [映画の感想]
裕福とはいえない世帯が集まったアパートで、ヴァイオリンのレッスンに通う少年。もちろん違和感たっぷりで浮きまくり。同世代の子どもたちからは、羨望混じりのいじめをうけている。彼らの暮らす一画は開発真っ最中で、そこかしこで古い建物が取り壊されたり、地面がアスファルトで整備されていたりしている。ある日、ヴァイオリン教室に通うところで悪ガキどもに苛められていたヴァイオリン少年を助けたのが、開発作業のためにやってきていたローラーの運転手。そのことがきっかけで、ヴァイオリン少年とローラーの運転手の間に友情が芽生える。
タルコフスキー監督の、卒業制作とのこと。絵本を読んでいるかのような気持ちにさせられる作品。子どもの目に映る世界は、驚きと不思議で満ちているのかしらねえとしみじみ思った。思った時点でもう若くないことの証明ではあるのだけれども。
■印象深かったシーン
(1)ローラーの荷台に置き忘れられていたヴァイオリンを発見した悪ガキたち。さてどうするか、壊してしまうのか、という暫しの緊張の後、悪ガキのリーダーが「そっとしておけ」と仲間に命じ、そっと蓋を閉じる。ぴかぴかしたヴァイオリンと悪ガキたちの瞳の対比が絶妙。
(2)少年が、運転手にヴァイオリンを演奏してみせる。運転手はうっとりと聞き惚れる。少年にとって、これまでヴァイオリンを習う目的がよくわかってなかったのだと思う。だから練習にもいまひとつ身が入らない。しかし、この瞬間、間違いなく少年はヴァイオリンを弾ける喜びを実感したはずだし、運転手にもっともっと聴かせたいと思ったはず……なんだけど、多分。
(3)一緒に映画を観に行こうと約束した少年と運転手。しかし、待ち合わせの場所に行こうとした少年の行く手を阻む母。出て行っちゃダメよと言われてしまう。初めは仕方がないと諦めた少年だが、やはり運転手との約束を破るわけにはいかないと、母の言いつけを破り家を抜け出す。約束の時間を大幅に遅れてしまったが、運転手は少年を待っていた。
映画『明日へのチケット』 [映画の感想]
物語の舞台は、インスブルックからローマに向かう列車です。袖すり合うのも多生の縁、という話…ちがうか。
3人の監督による共同長編。その3人というのが、”エルマンノ・オルミ×アッバス・キアロスタミ×ケン・ローチ”と、思わず、おお!と感嘆の声を上げずにはおれぬ顔ぶれ。それぞれの監督の持ち味を生かしつつ、ひとつの物語として完成された作品だと思います。派手さはありませんが、人間観察というか人間の切り取り方というかが絶妙で、見終えた後にもう一度観たいなあと思いました。
ただいま絶賛公開中!なので、興味のある方は是非。
※公式サイトURL
http://www.cqn.co.jp/ticket/
映画「モンスーン・ウェディング」 [映画の感想]
久々の更新です。うーん、頑張らないと…
深夜BSで放映してた映画です。何気なく見始めたのですが、とても面白かったです。
インド映画。裕福な家庭の一人娘の結婚式が執り行われるまでを、いくつかのエピソードを盛り込みながら描いた作品。冠婚葬祭というのは、その地域の文化がとても色濃く反映されるものだと思います。異なる文化様式を堪能するといった点でも、非常に興味深い。たとえば、結婚式を飾り立てる色。結婚コーディネーターは、西洋式だといって白で飾り立てようとしたけれど、白は葬式の色だということで、急遽別の色に変更させられるというエピソードがあって、なるほどなと思った。親世代の英語は聞き取りづらいけど、子ども世代の英語は流ちょうで聞き取りやすいというのも、時代背景というか世代格差というか、そういうものを感じさせるところだと思う。また、富めるものと貧するものとの差が重くならない程度に挿入されていて、インド文化をちょっと垣間見ることができた気分。
娘のお父さんは、頑固な面もあるけれど、家族思いの良い人。物語の最後で彼が下した決断は、一族のしがらみと子を思う気持ちの板挟みの中で、さぞ辛かっただろうと思うけど、格好良かった。
結婚する娘の奔放っぷりには、苦笑するしかない。結婚式を目前に控えながらも、元彼と逢い引きを続け、夜中に家を抜け出して車の中でセックスしようとしたところで警察に”公然わいせつ罪だ”と補導されそうになり、せっぱ詰まって元彼を置き去りにして車で逃走。翌日、このまま嘘をついて結婚するわけにはいかないと、破談の覚悟で婚約者に打ち明けたところ、婚約者が許してくれたので翌々日にはめでたく結婚。結婚式では婚約者と熱々ラブラブで、えーおまえ一昨日は元彼とカーセックス…と突っ込み入れたくなる。
結婚コーディネーターと、結婚を行う家の使用人の娘との恋愛模様が微笑ましく、この映画のオアシス。
一方でこの映画の暗部といえば、ロリコン叔父。しかもこの叔父。一族でも一番の成功者だから結構厄介。
そのほか、本当にたくさんのエピソードがてんこ盛りなので、もし興味があったら是非。