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映画「その土曜日、7時58分」 [映画の感想]

こんなん予約してたっけシリーズ第……第何弾だろうか。「ツタヤディスカス」あるあるですね、予約した作品が忘れたころに手元に届く。今回の作品も、そんなものの1つです。

映画「その土曜日、7時58分」。

いちおう感想を書くにあたってWikipediaで作品情報を確認したんですけど、監督がシドニー・ルメット氏だったと知って大興奮です。(いやね、主演がフィリップ・シーモア・ホフマンにイーサン・ホークという時点で、なんかもうすべて意識を持っていかれちゃってて気がつきませんでした。)

さて、シドニー・ルメット監督。なにがすごいって、「十二人の怒れる男」、「セルピコ」、「オリエント急行殺人事件」「狼たちの午後」などを手がけた方なんですってよ。ちょっとこれ、どれもめっちゃ名作ですよ!

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そして、シャロン・ストーン主演の「グロリア」も手がけて……うーん、これは正直、残念な作品でした。まあ、そういうこともある。

シャロン・ストーン主演の「グロリア」は、1980年のジョン・カサヴェテス監督「グロリア」を1999年にリメイクしたものなんですけど、このもともとの「グロリア」が素晴らしすぎたんですよね。ジーナ・ローランズが演じる最高にタフでクールなグロリアを先に観てしまうと、シャロン・ストーンじゃ物足りないのです。どうしたって比較してしまいます。そういった意味では、リュック・ベッソンの「レオン」は上手に再解釈してるなあと思います。



って、なんの話でしたっけ。
あ、そうそう、「その土曜日、7時58分」でした。


原題の中二病度:★★★★☆





この作品は、ひとつの家族の終焉を描いた作品です。

最初は、主人公たちが"一線"を越えてしまうことで、どんどん転落していくストーリーだと思ったんですけど、物語の展開とともにサイドストーリーが明確になっていき、「そうじゃなかったんだ」と途中で考えを改めました。

ええと、"転落していく"というのはそのとおりなんですけど、ある事件(宝石店強盗)をきっかけに主人公たち(兄弟)が破滅するという話ではなくて、兄弟の人生はとっくのとうにどん詰まりだったんですよね。だからこそ、馬鹿げているとしか思えない宝石店強盗に手を出したわけですけども。
で、この作品のエグいところは、宝石店強盗をきっかけに、長年蓋をしてきた父子そして兄弟間のドロドロとした感情をえぐり出すところかなと思います。

救いようのないラストに暗澹たる気持ちになりますので、そういうのは好きじゃないという方は、無理してみなくても良い作品かもしれません。
ただ、やっぱりどの役者さんもほんとうに演技が上手。薄汚い感情や思惑ばかりが交錯する物語なんて本来は見ていて辛いばっかりなはずなんですけど、この作品にはどんどん引き込まれていきました。


印象に残ったシーン3つ。

まずは、なんといっても、兄のアンディを演じたフィリップ・シーモア・ホフマン。
オーバードーズで死亡した彼が、ドラッグ中毒の役を演じる姿を見て感慨深い気持ちになりました。(もっとも、この映画が撮影された当時はドラッグには手を染めてなかったそうです。
急逝したオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマン、転落のきっかけはたった一杯の祝杯だった

彼の演技はほんとうにどれも強烈なんですけど、1つだけ印象に残ったシーンを選ぶとしたら、麻薬の売人を強襲するシーンでしょうか。そのとき、薬で酩酊した中年男がベッドの上に寝てるんですね。アンディと同じ、見事なビヤ樽腹の持ち主。アンディはその男を忌々しげに見つめた後、射殺します。
寝ているので顔を見られたわけでもなく、殺す必要はなかったのに殺したのは、自分自身への嫌悪だったのかなと思います。


印象に残ったシーン2つめは、弟・ハンクにまつわるシーン。
ハンクは離婚していて、元妻に養育費を払っているのですが、これが滞りがち。娘を溺愛していますが、娘のほうは元夫を罵りまくる母親の元で育てられたせいもあるのか、父親であるハンクをATMくらいにしか思っていない節があります。
印象に残っているのは、この娘がハンクに「遠足に行きたい」とねだるシーン。遠足費用は130ドル。ハンクにはそんなお金、逆立ちしたって出てこない状況なんです。で、ハンクは救いを求めるように元妻のほうを見るのですが、このときの元妻の笑顔がすごい。元夫を馬鹿にしたような、勝ち誇ったような、それはもう恐ろしい笑顔でした。夫婦仲ってこじれると地獄だなあと思った瞬間。


印象に残ったシーン3つめは、兄・アンディの妻が出て行くシーン。
この妻がなかなかの曲者。たぶんかなりの浪費家で、やや貞操観念も欠けています。それでいて、察しの良いところがあって、夫・アンディが"一線を越えてしまったこと"にも早々に気付きます。
それで、アンディのもとを離れ実家に帰ると言い出すのですが、啖呵を切って格好良く立ち去るのかと思いきや、立ち止まってちょっと気まずそうに振り返り「タクシー代、くれる?」とアンディにねだるんですね。これが「らしすぎて」絶妙だなあと思いました。

最後、原題について。
原題は「Before the Devil Knows You're Dead」、これは映画の冒頭に表示される文言「May you be in heaven a full half-hour」と対になっています。字幕は「死んだらすぐに天国に連れて行って、悪魔が気付く前に」とかなんとか。アイルランドの格言だそうです。
Before the Devil Knows You're Dead

なんだか、ものすごく中二病っぽくていいですよね!


といったところで。
とりとめないですが、以上、感想まで。



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